ヒートショック対策に取り組むきっかけは意外なところから
プカ太郎:健康福祉局さんは、なぜヒートショック対策に取り組んでいるのですか。
久我さん:市町村健康増進計画「健康横浜21」を策定する中で、横浜市の健康課題を分析したところ、高齢の方が冬場に多く溺死されていることが分かりました。「これは、ヒートショックとの関連が大きいのでは」と考え、重点的に取り組む健康課題のひとつとして令和6年度から取り組んでいます。
プカ太郎:横浜市は特別寒い地域ではないのに、どうしてなのでしょうか。
久我さん:原因は分かっていません。ヒートショックは病名ではなく、診断書にも記載されないので、実際に全国と比べてヒートショックで亡くなっている人がどれだけ多いのかもはっきりとは分かりません。当課が実施した「健康に関する市民意識調査」では、ヒートショックの対策方法を知っている人の割合が94.9%なのに対し、それを実践している人の割合は89.3%とやや下がっています。このギャップは埋める必要があると思っています。
身近な人からの啓発が大切
プカ太郎:市民の方々はヒートショック対策についてどのように考えているのでしょうか。
久我さん:高齢の方は特に関心が高い印象です。令和6年度(2024年)に「STOP!ヒートショック」プロジェクトと作成したヒートショック啓発のポスターとチラシは、地域の健康づくりを私たちと共に推進してくださっている、「保健活動推進員」にも活用をお願いしています。平均年齢がやや高いため、身近な方が亡くなっているケース等も耳にされているようで、自分事としても捉えながら啓発してくださっています。
プカ太郎:すごいですね!元々、身近なところから呼びかけるっていう活動は盛んなのでしょうか。
久我さん:保健活動推進員は横浜市独自の制度で、75年を超える歴史があるのですよ。他にも横浜市医師会や横浜市薬剤師会にご協力いただき、医療機関や薬局にポスターを掲示していただいています。また、地域ケアプラザ、図書館などにも掲示を依頼して、なるべく多くの市民の方に見ていただけるよう啓発を進めています。

<健康福祉局制作ポスター(同デザインのチラシもあり)>
プカ太郎:チラシをご覧になった市民の方からどのような反応がありましたか?
久我さん:建築局が実施したイベントでチラシを配布いただいたのですが、参加者にたまたま民生委員の方がいらっしゃり、「地域でもチラシを配布したい」とご連絡をくださったことがありました。ヒートショックについて、広く普及したいと思っていただけたことが嬉しかったです。
プカ太郎:すごい!地域と密接な関係をもって活動しているんですね。
市民の意識を高めるための工夫
プカ太郎:啓発意識を高めるような施策はありますか?
久我さん:前述のとおり、様々な場所へポスターを掲出しているほか、昨年の12月から今年の年初にかけて、横浜市営バス全線でもポスターを掲示しました。プカ太郎くんも見に来てくれましたよね。帰省する子ども世代がポスターを見て、高齢の親世代に話してくれる事を期待して年末年始の時期を狙いました。


<横浜市営バス車内へのポスター掲出の様子>
建築局が「ヒートショック対策」施策に取り組む理由
プカ太郎:プロジェクトでは2022年に建築局さんにお話を伺っておりますが、その後の変化についてお伺いできますでしょうか。
日下野さん:まず省エネ住宅を取り巻く環境が変化していると感じています。前回の取材当時は、令和2年(2020年)に、当時の首相が「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言し、国全体で脱炭素社会に向けた加速的な動きを見せ始めたこと、本市でも令和3年(2021年)に「横浜市脱炭素社会の形成の推進に関する条例」を制定し、健康かつ省エネな住まいとして、高断熱高気密の住宅の普及に取り組んできたことをお話ししました。その後の国の大きな動きとしては、令和7年(2025年)の4月から省エネ基準適合が義務化されています。これにより令和7年4月以降に着工する、原則全ての新築住宅・非住宅において断熱等級4以上が義務化され、また断熱等級6以上の住宅への補助が実施となるなど、脱炭素社会に向けた動きは加速化し続けています。

プカ太郎:そういった環境の変化を受けて、建築局の取組に変化はありますか?
日下野さん:最高レベルの断熱性能(断熱等級6及び7)や気密性能を備えた「省エネ性能のより高い住宅」の普及に取り組んでいます。これは前回の取材時から変わっていませんが、新築住宅には一定程度の効果が見られるようになったため、既存住宅の省エネ改修をより一層推進していくことにしました。例えば、令和6年度(2024年)は主に新築の住宅に対する補助金を出していましたが、令和7年度(2025年)は既存住宅を対象に断熱改修により住宅の断熱性の高めた方へ補助金を出して断熱等級6・7にする後押しをしています。また省エネ住宅は環境だけでなく、健康面にも多くのメリットがあることをより多くの市民の皆様に知っていただくべく、ウェブサイトやリーフレットによってPRしています。

<PRリーフレット>
断熱住宅を様々な角度から考えて・感じて・知ってもらいたい
プカ太郎:地域の協業の業者さんとの取り組みについてはいかがですか?
古謝さん:元々行政だけでは限界があるということで、共創フロントという公民連携の仕組みの中で事業者を募集し、個別に手を挙げてくれた事業者が単独でセミナーを実施していました。しかし、1回実施して終わりになってしまうのが課題でした。そこで設計者・施工者・不動産・建材設備メーカー・金融・コンサルなど様々な分野において、住宅の省エネ化の推進を自発的かつ意欲的に行う事業者の皆様と共に、省エネ住宅の普及啓発に関する様々な取組を実施するコンソーシアムを設立しました。これにより、実施する取組の分野の幅が広がり、複数の事業者が連携して普及啓発を行うことができるようになりました。
例えば、マンション窓改修をテーマにしたイベントの際は、窓の流通会社が運営を担い、コンソーシアム内の窓関係の施工店・メーカーが協力した例があります。さらに、物件を保有している事業者の協力により実現した、市民の皆様に「断熱等級6・7の住宅のあたたかさ」を実際に体験していただく体感見学会や、小・中学校や高校での環境教育等、様々な取り組みができるようになってきていると感じています。
プカ太郎:イベントのバリエーションも様々ですね。体感見学会に実際来場するはどんな方が多いですか?
古謝さん:そうですね。ちょうど住宅の新築を考えてらっしゃる方や、もうすでに家があるけど、改修を考えている方などです。また物件の近隣にお住まいの方がふらっと様子を見に来てくれたりもします。
プカ太郎: 環境教育も興味深いですね。
古謝さん:学生に向けて省エネ住宅の説明ができるようなプログラムを持っている事業者と協力して行っています。小・中学生に関しては授業で聞いた話を、家に帰って親御さんに話していただくことによる普及も狙っています。
プカ太郎:へえ!複合的な形で取り組んでいるんですね!
古謝さん:当課としては省エネ住宅を普及させたいと思っていますが、それだけだと興味を持ってくれる人が限られてしまうため、例えば、健康や防災、動物など様々なテーマと絡めて省エネ住宅を普及していくことができたらと考えています。
部局の垣根を超えた取り組みに

プカ太郎:普段から建築局さんと健康福祉局さんが連携して行っている、ヒートショック対策啓発の取り組みについてお話しいただけますでしょうか。
久我さん:建築局はさまざまな企業・団体と連携し住環境の改善について自治会や市民に直接アプローチしたり、健康福祉局からは健康部門の情報を伝えるなど、日常から連携しお互いの資源やノウハウを共有しながら進めています。
局によって関わる市民の傾向が異なるため、それぞれからの啓発を行うことで、よりいろいろな方に対してのアプローチができていると思っています。今後はさらに部局を超えた連携をしていきたいと思っています。
秋田さん:建築局と一緒に作ったチラシを配布する際、ヒートショックのことと断熱のことをセットで伝えることができるので、自然と「住宅と健康はセットで考えていかなければ」と考えたり伝えたりしている部分があります。
古謝さん:2024年8月から配布開始した「よこはま健康・省エネ住宅断熱等級6・7のススメ」という小冊子は手に取ってもらいやすいように小さいサイズで作っています。この中にもヒートショック等の健康についての記述もあり、健康福祉局と一緒に啓発していると考えています。
健康と住まいの両面から考えるイベント
プカ太郎:1月22日に、 「健康セミナー2026 inよこはま」が行われましたよね。
井上さん:このイベントでは、「住まいの断熱性能」と「健康」について、医師と建築士の2つの視点から語るイベントで、今回で3回目の開催となります。


<セミナー会場の様子>
今回の新たな取り組みとして、協賛企業13社による展示ブースと、5つのテーマに関する個別相談会を実施しました。セミナーで学び、展示ブースで実際に製品を体感して、工事業者・メーカー・建築士に個別相談ができる「健康的かつ省エネに暮らせる住まいづくり」について学ぶイベントとなりました。

<展示ブース>
プカ太郎:セミナー後も展示ブースにて引き続き相談できるとのことでしたが、ここにも連携が見えますね。
井上さん:そうですね。協賛企業の方がお持ちのノウハウを活かして、市民の方の問題解決に向けた、具体的な行動についてアドバイスできたのではないかと思います。
今後の展望・思い
プカ太郎:横浜市様として取り組むヒートショック対策啓発への思いについてお伺いできればと思います。
久我さん:ヒートショックは今日からできる小さな工夫で確実に減らせるリスクなので、分かりやすい情報発信を広く、市民の方へ届けられるように引き続き行き啓発してまいります。ヒートショック対策が当たり前な横浜市になるといいですね。
日下野さん:住宅内の各部屋の温度差を小さくすれば、ヒートショックのリスクを減らすことができます。皆様の健康維持に少しでもお役に立てるように省エネ性能のより高い住宅を普及させていきたいと思っております。
プカ太郎:これからもよりよい市民生活に向けたお取り組み、よろしくお願いします!
本日はありがとうございました。
















