Q.秋元教授は普段どんなことを研究しているのですか?

秋元教授:「より少ないエネルギーで、より良い環境を実現する」ということを目標に掲げ、建築環境デザインや建築設備、地球環境への影響であるとか次世代建築設備に関する研究をしています。最近の研究室の具体的な研究テーマとしては「住宅居住空間における環境負荷削減技術に関する研究」であるとか「住宅以外の非住宅、ビルの次世代型建築設備に関する研究」等を行っています。

 

Q.秋元教授がヒートショック対策に関わるようになったのは、いつ頃からでしょうか?

秋元教授:もともと学生時代の頃から「建築の環境工学」という分野の研究をしていました。大学教員になってからも、住宅・非住宅を問わず「室内の温熱環境」というテーマには常に注目していましたね。そして、15年くらい前から、国土交通省の「健康維持増進住宅研究委員会」や、「スマートウェルネス住宅研究委員会」等にも参加して、本格的に健康・快適で安全・安心な住宅内環境を研究するようになりました。こうした研究の中でヒートショック対策にも関わるようになってきました。

プカ太郎:10年以上も前からヒートショック対策に取り組んでいるんですね!

秋元教授:そうですね。さらに現在はSDGsを標榜しながら「スマートウェルネス住宅とは何か?」といった研究を進めています。

 

Q.寒い季節は空気がこもりがちですが、ヒートショック対策に有効な換気方法を教えて下さい。

秋元教授:新型コロナウイルス感染症の蔓延、そのための緊急事態宣言等の影響でテレワークやオンライン授業が一般的になってきて、多くの人々が今まで以上に家の中で過ごす時間が長くなってきたと思います。それに伴って室内の換気の重要性も増してきました。

プカ太郎:たしかにボクもおうち時間が増えました!

秋元教授:まず24時間換気システムが備わっている住宅に関しては、常に換気システムをオンにしていただくということが大事です。またそれが正常に動作しているかの確認も大切ですね。そして24時間換気システムが作動していても、居室によっては充分な空気の入れ替えができていないケースも考えられます。こういうケースやそもそも24時間換気システムが備わっていない住宅の場合は、やはり窓や扉といった開口部を開くことによる換気、外気導入が必要となります。

プカ太郎:どんな住宅でも、窓や扉を開けての換気は大切なんですね!

秋元教授:はい。しかし寒い時期にいきなり窓を全開にしてしまうと、室内の空気温度が一気に下がりヒートショックを引き起こす危険があります。そこでオススメの換気方法が、部屋の対角線にあるような2ヶ所の窓や扉など開口部を5〜15cmほど開けていただくことです。

プカ太郎:5〜15cm!そんな少しの幅でも効果があるんですね。

秋元教授:はい。十分効果があります。しかし、1ヶ所だけでは充分ではありません。2ヶ所開けることが必須です。

 

Q.住宅内においてのヒートショック対策では、どんな方法が有効ですか?

秋元教授:特に古い家の場合はリフォームがいちばん有効です。もともと既存の住宅で断熱性能が充分でない場合、家全体の断熱性能を高めていただくような断熱材の工事であったり開口部、特に窓ガラスやサッシ部分の改修というのはすごく効果があります。

 

Q.なるべくお金をかけずにヒートショック対策をする方法はありますか?

秋元教授:そうですね。費用的にリフォームが難しい場合は、カーテンを変えるのがオススメです。冬の窓周りはどうしても冷たい気流が室内側に流れ込んできます。それを抑制するため厚手で床まで届くようなカーテンに変えると効果があると思います。

 

Q.ずばりヒートショック対策に有効な住宅って、どんな住宅なのでしょうか?

秋元教授:断熱性・気密性が高い住宅ですね。北海道の住宅が良い例です。皆さんご存知の通り北海道は寒冷地ですが、ヒートショックによる事故のデータを見ても、発生件数がかなり少ないという結果が出ています。これは北海道の住宅は一般的に断熱性・気密性が高く、さらに住宅全体を暖房冷房するという特徴が関係していると考えられています。

プカ太郎:おうち全体を暖房冷房するって、どういうことですか?

秋元教授:日本の住宅のほとんどは、基本的に人のいる居室だけを暖めるようになっています。リビングや寝室が暖かくても、廊下やトイレにまで暖房が効いていることが少ないですよね。

プカ太郎:はい。それが普通なんだと思っていました。

秋元教授:北海道の住宅は基本的に、廊下やトイレまで含めて建物の中全体を均一に暖めるように造られているんです。だから家の中での温度差が少なく、それによってヒートショックの発生件数も抑えられていると考えられています。ちなみに海外の住宅でも北海道と同じく住宅全体の温度を一定にする冷暖房方式が多く見られます。

プカ太郎:できるだけおうちの中の温度差をなくすことが、大切なんですね!

 

Q.日本の住宅全般において、今後変わっていってほしいことはありますか?

秋元教授:もっと冬の寒さに強い家が標準になっていってほしいですね。日本の住宅は伝統的に夏の暑さ対策が重視されてきました。これは吉田兼好の『徒然草』にある有名な一節「家の作りやうは、夏をむねとすべし」が、日本の文化に刷り込まれていることに起因するのかなと思います。しかし、実際に断熱性能の悪い住宅において暖房冷房のエネルギーを考えると、夏よりも冬の方が10倍近くエネルギー消費が大きくなるんです。

プカ太郎:10倍も違うんですか!

秋元教授:外気温と室内の温度差を考えるとイメージしやすいと思います。もちろん地域によって差がありますが、例えば、夏の外気温が35℃で室内を27℃に保とうとすると温度差は8℃です。一方で冬は外気温が5℃だと仮定すると、室内を27℃に保とうとすると温度差が22℃になります。夏と冬の温度差を比べてみてください。冬のエネルギー消費が大きくなるのもわかると思います。

 

Q.最後に、これを読んでいる方にメッセージをお願いいたします!

秋元教授:現代では住宅や生活習慣などあらゆる面において、健康を害するリスクが次々と明らかになってきています。一昔前は当たり前だったことでも「実は健康を害するリスクがあった」というようなことも往々にしてあります。だからこそ、これまでの「当たり前」にとらわれず、新しいメカニズムを正しく理解して、安心安全に暮らせる住宅の工夫をしていただきたいと思っています。

プカ太郎:ありがとうございました!とっても勉強になりました。ボクもできるところから少しずつおうちのヒートショック対策を進めていきます!

 

 

 

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