ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋への移動など、温度の急な変化が体に与えるショックのことです。こうした変動は心臓に負担がかかるため、心筋梗塞や脳卒中につながる恐れがあり危険です。特に高齢者はヒートショックを起こしやすいといわれているため対策が重要です。そこで、この記事では高齢者がヒートショックに注意すべき理由と有効な対策をご紹介します。
■浴室に潜むヒートショックの危険性

厚生労働省の調査による浴槽での溺死者数は、2010年には4,467人だったのが2019年には5,690人となり、9年間で約1.3倍に増加しています(家庭外の事故も含む) 。
さらに、このうちの約9割が65歳以上の高齢者であることから、高齢者にとっての浴室の危険性が伺えます 。
また、東京都23区に限っていえば、2018年は1,402件の入浴中の死亡例があります。 このうち約5割が12月から2月にかけて発生しており、冬場の浴室は溺死を含む死亡事故のリスクが高いことがわかるでしょう

東京23区内入浴中の死亡者数の推移(月別・2018年)
1.出典:「政府統計の総合窓口(e-Stat)」、2019年人口動態調査―上巻 死亡 第5.30表 不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)
2.出典:「政府統計の総合窓口(e-Stat)」、2019年人口動態調査―上巻 死亡 第5.30表 不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)、上巻 死亡 第5.31表 不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年齢(5歳階級)別死亡数
3.東京都福祉保健局東京都監察医務院ホームページ(http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kansatsu/)」に公開されている「東京都 23 区における入浴中の事故死の推移」から。
様々な要因が考えられるため、浴室内のすべての死亡事故がヒートショックによるものとは言い切れませんが、浴槽での溺死にヒートショックが深く関わっていることは間違いなく、高齢者は特に注意が必要と考えられるでしょう。
浴室は住宅の北側にあることが一般的に多いため、特に冬場は浴室の気温が家の中の他の場所と比べて低くなる傾向にあります。暖かい部屋から寒い浴室に移動することで体が熱を保持するために血管を収縮させ、結果として血圧が上がります。そして、お湯に浸かることで血管が拡張して血圧が下がるといった急激な血圧の変化が何回も起こります。

こうした血圧の変動によりヒートショックが引き起こされるといわれており、その後の心筋梗塞や脳卒中を伴う意識喪失につながりかねません。万が一浴槽の中で意識を失ってしまった場合、溺死のリスクは格段に上がります。
入浴時の血圧の変動をなるべく起こさないために、入浴前に浴室や脱衣室を暖めておくことが重要です。

できるだけ家全体を、普段生活している部屋と同じ温度にしておくことが、部屋間の移動時の温度変化を小さくするためにも有効です。浴槽にお湯を沸かすときはふたを外し、浴室内に温かい蒸気を行き渡らせることも浴室を暖める効果があります。また、シャワーの温度や浴槽のお湯の温度は41度以下に設定し、熱いお湯を急に体へかけることは避けましょう。お湯に浸かる場合は10分以内に留めることもヒートショック対策として有効です。浴槽から出るときも急に立ち上がらず、ゆっくりと立ち上がったり、浴槽の縁に座るなどして呼吸を整えることも急な血圧の変化を防ぐのに効果的です。

一方、高齢者だけにかかわらず、アルコールを摂取しているときや食後すぐの入浴は体に負担がかかり、ヒートショックのリスクが高まるため、年齢を問わず避けるべきです。
また、精神安定剤や睡眠薬などを服用した後の入浴はヒートショック時の意識喪失による溺死の可能性がさらに高まるため、注意が必要です。

入浴前に家族などの同居者に声をかけることで、特に高齢者はいつもよりも入浴が長いなど異変に気づいてもらいやすくなるため、習慣化すると良いですね。

あなたのお風呂の入り方をチェック!(https://heatshock.jp/check/
■ヒートショックのリスクが高い人の特徴

高齢になると、血圧を正常に保つための機能が低下する傾向があります。そのため、激しい寒暖差による血圧の変動の際、血圧を正常にコントロールできなくなってしまう可能性が高いです。

つまり、すべての高齢者はヒートショックのリスクが高いと考えておいた方が良いでしょう。

「自分は元気だから大丈夫」という過信は命に関わる重大な事故につながりかねません。特に入浴時、熱いお湯を好む人や普段から立ちくらみやめまいを起こしやすい人、普段の生活では気にならなくても浴槽から立ち上がる際、立ちくらみやめまいを起こすことがあるという人はヒートショックのリスクが高いと考えられるため、特に注意しておくことをおすすめします。

また、高齢者は温度変化に対する感覚が鈍くなる傾向にあるため、実際よりも寒さや暑さの変化に気づきにくいといえます。そのため、感覚的には寒くなくても、体はすでにヒートショックを起こしてしまっているということも十分にあり得ます。

普段から血圧が高めの高齢者は、さらに血圧を正常に保ちにくいため、ヒートショックになりやすい状態だといえます。加えて、住宅が古い場合、隙間風が入りやすかったり、断熱性能が著しく低いということも十分に考えられます。この場合、部屋間の温度差が激しかったり、浴室が冷え込みやすかったりするため、古い住宅に住んでいる高齢者は特に注意が必要です。

 

■冬場にできるヒートショックの対策

宅内の寒暖差が激しくなる冬場は、特にヒートショックの危険性が高まる時季です。そのため、できる限り家全体の温度を均一に近づけること(温度のバリアフリー化)がヒートショックの対策として効果的です。

浴室や脱衣室を入浴前に暖めておくことはもちろん大切ですが、それ以外にもトイレやよく通る廊下を暖めておくことが欠かせません。特にトイレでは衣服を脱ぎ、低い室温の中で肌をさらすことになるため、十分に暖めていないとヒートショックの危険性が高まります。
さらに、トイレでは用を足す際にいきむことも少なくないことから、これが血圧の上昇につながり、結果的にヒートショックにつながることもあり得ます。便座を暖める機能を活用することで、冷たい便座による体温低下を防ぐことが可能です。

トイレのヒートショック対策をチェック!(https://heatshock.jp/map/
高齢者は温度を感じにくくなると同時に、喉の渇きも感じにくくなります。また、冬場、暖房が効いた室内で過ごすことが多いと、部屋と同様に体内の水分も不足しがちになります。
汗をかく夏場ではなくても、適度な水分補給は重要です。

体が脱水状態にあると血圧が下がったり、不安定になる危険性があり、脱水状態で激しい温度差に見舞われるとヒートショックを起こしやすくなります。そのため、入浴前やトイレのあとにはこまめに水分補給を心がけるなど、家を暖める以外にも意識してヒートショック対策しましょう。特に、寒い地域は暖房器具を使う機会が多く、それに伴う乾燥も激しくなるため、家の温度調節とともに適度な水分補給を心がけるのは大切です。

住宅が古い場合、断熱性を高めるために壁や床の材質変更を含んだリフォームを行うことも冬場のヒートショック対策には有効です。
リフォームが難しい場合でも、窓やサッシを断熱性能の高いものに交換するだけで、部屋全体に対する高い断熱効果が期待できます。

ヒートショックの原因として、浴室の環境が注目されることが多いですが、住宅全体の温度差をできるだけなくす、温度のバリアフリー化が高齢者にとって安心な住まいとなるでしょう。

ヒートショック対策の具体的な方法はこちら!(https://heatshock.jp/map/

 

■高齢者のヒートショックは周りの人も一緒に対策することが大切

高齢者は身体的にも衰えてくるため、ヒートショックの対策をすべて自分で行うのは困難な場合もあります。そのため、高齢者が入浴する際には、家族が状況を気にする習慣をつけるなど、同居者の日頃からの対策が重要です。

普段の入浴時間がおよそどれくらいなのかを把握しておき、普段よりも入浴時間が長い場合には様子を見に行って声をかけるなど、万が一の事態にできるだけ早く気付けるようにする工夫が必要です。また、浴室から音がまったくしない、または大きな音がしたときにもすぐに様子を見に行くようにしましょう。

その際、浴槽で高齢者がぐったりしている場合にはすぐに浴槽のお湯を抜き、溺れるのを防ぐようにします。救急車を呼んだら到着までの間、できる限りの救命措置を取ることが重要です。高齢者と同居する場合はいざというときのために、救命措置の講習を受けるなどして応急手当てを身につけておくのが望ましいでしょう。

万が一に備え、おうち全体のヒートショック対策をチェック!(https://heatshock.jp/map/
冬場の夜間に行くトイレもヒートショックの危険性が高いです。そのため、少し布団から出るだけであっても冷たい床に足をつけなくて済むように、すぐ手の届くところに靴下を用意したり、ガウンなどの羽織りものを用意することもヒートショックの対策になります。また、トイレ後の水分補給のための飲み物を枕元に置いておくなどするのも効果的です。高齢者だけでは対応しきれない部分は家族など同居する人の手助けが重要で、結果としてヒートショックを避けることにつながります。

高齢者自身もヒートショックの対策に意識を傾けつつ、ご家族など周りの方からもぜひ注意を促してみてくださいね。

《参考文献》
・消費者庁ニュースリリース「冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください!」平成29年1月25日
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/170125kouhyou_1.pdf
・公益社団法人鹿児島県医師会健康トピックス
http://www.kagoshima.med.or.jp/people/topic/2010/308.htm
・消費者庁ニュースリリース「みんなで防ごう高齢者の事故!」令和元年12月18日https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/consumer_safety_cms204_191218_01.pdf
・消費者庁ニュースリリース「冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください!」平成30年11月21日
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/caution_009_181121_0001.pdf
■7つのポイントを気軽に確認

ご紹介したヒートショック対策は、動画でも詳細をご覧いただけます。
https://heatshock.jp/movie

「ヒートショックとは」の動画も併せてご覧頂き、ヒートショックについてぜひ理解を深めてくださいね。