(1)先生、まずは血圧について教えてください!血圧が上がったり下がったり、どうして起こるのですか?血圧の変化は体にどのような影響を与えるものですか?
はい。まず血圧とは、心臓が収縮して血液を送り出した時に血管壁を押す圧力のことですね。通常は動脈の圧力のことをいいます。
心臓が収縮する時最も高い圧力になり、反対に弛緩(しかん)した時に低い圧力になり、これが平常時の血圧の上下ということになります。
血圧が高くなったり、低くなったりする要因は様々あるのですが、例えば一日の生活の中でも朝昼晩、睡眠中でも変わってきますし、入浴や運動、食事や飲酒、喫煙、またストレスなどでも変化します。
また、季節の変わり目や寒暖差など環境の変化によっても影響を受けるものなのです。
電圧は電流×抵抗であらわせますが、血圧も同じ考え方ができて、電流は循環する血液の量を指し、抵抗は血管の細さを指します。血圧が変化するのには、血液の量と血管の細さが関係するわけです。
血液の量を規定するものとしては、体内の塩分及び、塩分を排出する力です。
塩分は腎臓から排出されますが、腎臓機能が低下して体から排出できず食塩がたまると、血液が増え血圧が上がることになるのです。
また、血管が固くなり、血管の抵抗が増えた時にも血圧が上がりますし、 高齢の方に高血圧が多くみられるのは、血管の老化が影響しているからですね。
血圧が体に与える影響として、高血圧でのリスクは、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞など危険性の高い症状を引き起こすこともあり注意が必要です。
プカ太郎(以下、プカ):普段あまり意識してないけど、血圧ってすごく変わりやすいのですね。
(2)ヒートショックと血圧にはどのような関係があるのでしょうか?
まず、寒い時、温度を最も感じる部分は手の平と足の裏のような末梢(まっしょう)です。
‘’冷たい”ということを神経が感知し、その情報が脳に行くことによって交感神経が亢進(*1)し、
血管が収縮して血圧が上がります。温度差が大きいと“冷たい”という感覚がより大きくなるので体が強く反応してしまうのですね。このような急激な血圧の変化がヒートショックを引き起こす一つの要因ですので、とても密接な関係があるのです。
温度の違いによって、どの程度血圧に影響があるのか実際に実験をしたことがあります。 おうちの中で、床の表面温度と、床から高さ10cm、1mの温度の中で、どこが最も血圧に影響を与えるか測定したところ、床表面に近い方が影響が大きいことが分かりました。
床に対策をすること、冷たいところを抹消でふれないことがヒートショックを防ぐためには重要になりますね。
(*1)読み方:「こうしん」 意味:高ぶり進むこと
プカ:こんなに密接な関係があるのですね。僕も気をつけよっと!
温度差があるといえば、冬はおうちと外の気温の差も大きいですよね。それも関係するのかな?
(3)住んでいる場所や気候、気温など外の環境が血圧の変化に影響するということはあるのですか?
はい、あります。
勿論、皆さんが住んでいる地域によって気候や気温も異なるでしょうし、朝晩でも随分気温変化が大きいところもあるのではないでしょうか。でも、なかなか住む地域を簡単に変えたり、自然環境を変えるということは難しいですよね。
これからのキーワードは、「周辺環境、住環境を整える」です。
家を建てる、建て替えるタイミングで環境を整えることも大切ですが、まずは「皆さんがどういう風に暮らすか」ということを考えて決めていくことが大切だと思います。
プカ:“暮らし方“ですね。 僕は川沿いが大好きなんだけど、考えないといけないなぁ。
(4)日本全国でいろいろな環境の違いがあると思いますが、地域によってリスクレベルは変わるものでしょうか?
はい、変わると思います。
しかし、実際は、外気温よりも住環境の違いの方が影響は大きいです。
住宅の環境が良ければ、外の影響は及ばないはずなのです。勿論皆さんがお住まいの環境特性を理解しておくことは大切ですが、自然環境を変えることはできないのでうまく付き合うしかありません。
注意しなくてはならない点としては、災害時です。
災害時には避難所の状況や、住環境が壊れることで外環境に依存してしまい、リスクが高まってしまいます。 過去の災害時に、朝6時に避難所からトイレに行った際に倒れた方がいらっしゃいました。
「朝」「寒い」「いきむ」という三拍子で、とても大きな血圧の上昇を引き起こしてしまうのです。
プカ:平常時だけでなく非常時のことも考えておかないといけないですね。
(5)外環境だけでなくおうちの環境も血圧の変化に影響するのでしょうか?
むしろ、外環境よりもお家の環境の方が大きく影響します。
おうちの中では、特に朝、洗面所等の水回りは要注意です。
前の日に不眠だったり、飲酒をしていると交換神経が亢進しやすい状態になり、寒い朝に
“冷たい水”に触れることで、狭心症を引き起こしてしまいます。
時間帯、場所、前日の状況等、いくつかの条件でヒートショック が引き起こされます。
ひとつは血圧の上昇、もうひとつは交感神経が亢進するとその影響が心臓に直接行き、急性の心不全を起こすことになる。もうひとつは心臓の血管がれん縮 する状態になる。この3つで循環器の循環器に悪い影響が引き起こされます。
また、日本のお風呂は寒い場所から温かい湯舟へ、温かい湯舟から寒い場所へ移動する環境が多いので、お風呂にも注意が必要です。時間帯に限らずですが、朝はよりリスクが高まります。
対策としては脱衣所も暖めておく、熱いお湯を避ける、入浴前にアルコールは飲まない等が挙げられます。
プカ:朝、顔を洗う時“冷たい!”って感じるアレは、危険なサイン!?僕はお風呂も大好きだけどお風呂場や脱衣所も温度差をつくらないように注意しないと! 洗面所やお風呂だけでなく、おうち全体が寒くなかったらいいのかな?
(6)では、おうちの中の温度はどれぐらいにするのが理想的なのでしょうか?
おうちの温度についてはWHOも定めている、少なくとも「18度以上」を保つ事が良いでしょう。
高齢の方は24度以上を目安とした方が良いですね。
18度、24度以下はリスクが高まり、10度以下ですとかなり危険です。
理想的には、どこか一か所だけではなく、おうち全体を暖め、温度差をなくすことですね。
(7)外の環境も、おうちの環境もそれぞれ状況が違うから、自分の生活環境と対策方法を知っておくことは大切なんですね。 では、人の体の違いはどうなのでしょう?血圧の変化のしかたも人それぞれ違いがあるのですか?
そうですね、人それぞれ体が違うように、血圧の変化のしかたも違います。
ですので、体調管理にも、対策を講じるにも、大切なのは個人個人の“メジャー(基準)”を持つことだと思います。
ご自身が、大体気温が何度ぐらいの時に寒いと感じるのか等、自分の感覚を絶対値でメジャーを把握することが良いでしょう。
例えば、横軸に温度をとり、縦軸に血圧のレベルをとった時に、その傾きが緩ければリスクが低く、
傾きが大きい場合はリスクが高いなどと判断をすることができます。少しの温度の差で血圧が10以上
変わる方は気温感受性が高いと言えます。
気温感受性は年齢による影響が大きく、高齢の方は低い温度の影響を受けやすいという性質があります。
対策としては、普段から自分の血圧を測り、それぞれが基準のレベルを知ることです。
また、働いている方は仕事のストレスも影響するので、寒さ、睡眠状態、仕事のストレスなども考慮した方が良いですね。
プカ:一般的な基準ではなく、自分の基準を知ることが大事なのですね。よし、僕も自分のメジャーをつくってみようかな。
(8)ところで、自分の血圧の状態を知ることはとても大切だとわかったのですが、どんな時に測ったり、どんなことに気を付けておくと良いのでしょうか?
少なくとも3日間、朝2回、寝る前に2回計測し、その平均値を把握しておきましょう。
寒い日もあれば暑い日もあるため、その季節の変動の中で血圧の変化がどれくらいあるかを把握しておきましょう。気候が安定している秋口は、標準として計測するのには良い季節といえます。
(9)より標準的な血圧を計測するためにはどのような状況や時間帯が良いのでしょうか?
起床後1時間以内に2回、排尿後、朝に薬を飲む前、夜寝る前に測るのが良いでしょう。
そのタイミングで最高血圧135、最低血圧85以上だと高血圧と言えます。
プカ:普段こんなに血圧を測ったことないけど、自分のことを知っておくには必要なのですね。
(10)普段どのようなことを意識すればヒートショック対策に繋がりますか?
温度の変化に敏感になり、温度差の影響を受けないような環境を整えることが大切です。
最もリスクが高いのは暖かいところから寒いところに移動するタイミングです。
暖かい日から寒い日に変化したタイミングで是非血圧を測ってみてください。
(11)最後にメッセージをお願いします!
世の中にメジャーが必要です。
健康状態を知るために血圧を測定し、上がっている方は食事や運動に加えて生活習慣、そして是非住環境を見直してみてください。
知ること、意識すること、実行することでヒートショックのリスクは下げることができます。
プカ:とっても勉強になりました。先生ありがとうございました!
さて、さっそく血圧測らないと。。。
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