Q.横浜市が「高断熱・高気密で省エネかつ健康な住まい」の普及を推進している理由を教えてください。

林さん:理由は大きく2つあります。
1つは地球温暖化対策が加速していることです。今から約2年前、当時の首相が2050年にカーボンニュートラル、「脱炭素社会」を目指すと宣言しました。実は横浜市も首相の宣言の1年ほど前から脱炭素社会の実現を宣言しており、昨年の6月には「横浜市脱炭素社会の形成の推進に関する条例」が提案され、可決しています。高い目標の実現に向けた取り組みの1つとして、高断熱・高気密な住宅の普及に取り組んでいます。

プカ太郎:なるほど!もう1つの理由を教えてください。

林さん:もう1つの理由は健康の視点です。ここがヒートショックと関連する部分になります。世界保健機関WHOが、寒さによる健康被害を抑えるため、冬季室温を18℃以上にすることを強く勧告しています。

プカ太郎:あのWHOが!

林さん:これを目指すためには、住まいを高断熱・高気密にすることが大切です。住まいの断熱性が低いと窓に結露が発生しやすく、カビやダニの発生にもつながりますので、アレルギー症状を防ぐ意味でも、高断熱・高気密な住まいは健康にとって大切だと考えています。

プカ太郎:へー!室内の結露の原因は断熱性の低さだったんですね!

林さん:ちなみに2022年度(令和4年度)に日本の「住宅性能表示制度」が新しくなり、断熱の等級が大きく変わりました。これまでは等級4が最高の断熱等級だったのですが、等級6と7が新しく創設され、住まいにはさらなる断熱性能が求められるようになっています。

プカ太郎:これまで等級4が最高だったのに、一気に等級6や7まで創設されたんですね!知りませんでした!
 
 
Q.これまでにどのような施策を行ってきましたか?

城向さん:2011年(平成23年)に横浜市が「環境未来都市」に選定されまして、2014年(平成26年)頃から「省エネかつ健康な住まい」に関する様々な取り組みを行ってきました。

プカ太郎:例えば、どんな取り組みをしてきたのですか?

城向さん:当初は住宅の断熱対策として取り入れやすい「窓の改修・断熱化」に対する補助金制度の実施、住まいの断熱化を啓発するセミナーを開催してきました。また、市民の皆さまからの相談に乗っていただくため、専門知識を持つ建築士さん等にご登録いただく「省エネ住宅相談員制度」を設定しました。

プカ太郎:相談しやすくなったのは嬉しいですね!

城向さん:近年は住宅全体の高断熱・高気密化に向けて「省エネルギー住宅アカデミー」と称して民間の企業・団体の皆さまと共同で「高断熱・高気密で省エネかつ健康な住まい」に関する様々な講座を開催しています。

プカ太郎:「省エネルギー住宅アカデミー 」!なんだかちょっと難しそう…。

城向さん:そのためのわかりやすい教科書のようなツールも制作しました。こうした様々な取り組みの結果、最近では市民の方からの問い合わせなども増えております。以前と比べて住まいの高断熱・高気密化が、少しずつ一般的になってきているのかなと感じています。

プカ太郎:もっともっと広がっていくと嬉しいなと思います!


 
 
Q.「高断熱・高気密で省エネかつ健康な住まい」を普及する上での課題を教えてください。

林さん:先ほどご紹介させていただいた新しく創設された断熱等級6・7の普及です。現状では断熱等級6・7の住宅は、まだ珍しいんですよ。新築の住まいの8割ぐらいは等級4まで満たしていますが、等級6・7はまだ始まったばかりで少ないため、いかに増やしていくのかが課題です。

また、横浜市にはすでに建っている住宅が165万戸もあります。今すでにある住宅の断熱性能をいきなり等級6・7に上げることはなかなか難しいため、窓を良いものに替えるとか、少しでも性能を上げていくことが必要です。

プカ太郎:等級6・7の住まいの断熱性、体験してみたいです!

林さん:市民の皆さまからすれば、お金もかかってしまいますし、リフォームの場合は工事で生活にご負担をかけるためハードルが高いと思うのですが、それだけの価値があるということを知っていただくこと、それから体感していただくこと、そのための情報発信をしていくことが大切だと思っています。

また、等級6・7の住まいをつくるためには、高度な技術も必要となりますので、各事業者さんが行っている技術力向上のための取り組みをいかに支援していくかも課題の1つですね。

プカ太郎:住まい手側にも、つくり手側にもハードルが高いんですね。是非とも頑張って下さい!
 
 
Q.これまでに補助金を活用された方々からの感想を教えてください。

杉江さん:補助金の申請窓口は「横浜市住宅供給公社」さんになるのですが、窓口に来られた方に理由を尋ねてみると「住まいが寒い」という意見が圧倒的に多いようです。実際に補助金を使って改修を終えた方にお話を聞いてみると、室内の寒さが大幅に改善されただけでなく、遮音性も上がって静かになったことが嬉しいという声が多いです。あと「もっと早く改修しておけば良かった」という声も合わせて多いですね。

プカ太郎:何年も暮らす住まいだから、早めに改修した方が長く快適に暮らせるんですね。

杉江さん:実際に省エネ改修の補助制度を利用した54人へのアンケ―ト結果をもとに、断熱改修された方の声をまとめました。

杉江さん:住まいの改修後の快適度について「快適」と答えた方が34名、「やや快適」が19名でした。また、健康状態について「満足」と答えた方が26名、「やや満足」が10名でした。

改修された方からは
「1年を通して快適。夏は涼しく、冬は暖かく12月に入っても暖房を使わない日が続いている」
「改修した2部屋とも、外より十数度暖かい。暖房時の室温は23度を維持できている」
「冬季の結露が圧倒的に改善され。さらに電車の音など外からの音が静かになり気にならなくなった」
「部屋の寒暖差が減り、子供が風邪をひきにくくなった 。」
以上のようなご意見をいただきました。

プカ太郎:寒暖差が減るだけでなく、外からの音も静かになるんですね!

杉江さん:住まいの改修後の冷暖房の使用頻度について「減少した」と答えた方が24名でした。「増加した」と答えた方のほとんどが、コロナ禍の影響で外出制限や在宅ワークにより、家にいる時間が長くなったことを理由に挙げていました。

改修された方からは
「西日の影響による温度上昇が以前より気にならなくなった」
「冷房の風量設定を長時間強風にしなくても、すぐに涼しくなり外気の熱を断ってくれていると感じる。特に窓際の効果で感じます。」
以上のようなご意見をいただきました。

プカ太郎:快適になる上に、エコ!長い目で見ると冷暖房費もグッとお得になりますね。


 
 
断熱等級6、7の住宅の普及に向けて

杉江さん:等級6、7の新築、改修のモデル住宅を活用し、室内の温湿度データや、お住まいの方へのアンケートなどの様々なデータを取得し普及啓発に利用しようとしています。また、モデル住宅の施工中や完成時の現場見学会も行っていて、参加された方からご好評いただいております。

プカ太郎:断熱等級6,7の空間、ボクも体感してみたいです!

杉江さん:このほかにも、設計・施工者の技術力向上への支援として、技術講習会を開催し、受講した設計・施工者を本市が登録・公表する制度の検討や、工務店、設計者、メーカー等の多様な主体で構成するコンソーシアムを設立し、省エネ住宅の効果などのきめ細やかな情報提供、新築・改修時の相談対応、設計・施工者の技術力向上の支援等を総合的に行う予定です。

プカ太郎:設計・施工者の方の技術力向上が、普及につながるんですね。
 
 
Q.最後に横浜市の目指す省エネ住宅の未来について教えてください。

林さん:我々の最終的な目標は「高断熱・高気密で省エネかつ健康な住まい」が当たり前となるような世の中にすることです。

プカ太郎:当たり前?

林さん:日本は地震大国ということもありますが、「耐震性の高い住まい」は今の時代当たり前になっています。しかし、「高断熱・高気密で省エネかつ健康な住まい」はまだまだ当たり前になっていないと感じています。冬に暖かく、夏に涼しく過ごせる住まいが、未来の横浜の当たり前になっていると嬉しいですね。

そのためにも我々行政だけでなく、事業者さんたちとも一緒に、みんなで力を合わせながらがんばっていきたいと思います。ご協力をよろしくお願いします!

プカ太郎:ありがとうございました!大変だと思いますが、ぜひとも頑張って「高断熱・高気密で省エネかつ健康な住まい」を当たり前の世の中にしていきたいですね!
 
 
 

 
 
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